大蔵建設株式会社

「木のハコ」を企画するにあたって

大蔵建設株式会社 代表取締役社長

              大蔵実

   一級建築士 宅地建物取引士

当社では25年間、家づくりにおいて一貫した設計指針を3つ持っています。

  1.耐久性の高い南信州の木で地震に強い構造体をつくる。

  2.冬温かく夏涼しい健康な家をつくる。

  3.飽きの来ない住み継がれる家をつくる。

この3つの設計指針を実現するために、守って来たとても簡単なルールがあります。

それはクライアント(設計依頼者)に対して、まず「田の字」の構造体を基本にプランを作成し提案して来た事です。イラスト1 伊那谷ベーシック柱勝ち工法

イラスト1 伊那谷ベーシック柱勝ち工法

実際は様々な要望に応えながら「田の字」を崩さずプランを提案する事は結構難しい事なのですが、クライアントの理解を得ながら全棟この方針を貫いて来ました。

 何故貫いて来たのか?

田の字にする事で構造的にバランスが取れ、無理なく構造体を組む事が出来き、基本的に強い建物になる事が一つ目の理由です。

二つ目は、凸凹のない田の字の建物は一般的に(単純に)断熱、気密性能に優れているからです。

そして「田の字」の構造体に丈夫な蓋をすると、最小限の柱と壁で構造体が成立し、内部空間が自由に使える様になります。構造計算(許容応力度設計)を行うとそれが良く解ります。イラスト2 木のハコ

内部空間が自由に使えると言う事は、家族構成の変化や生活スタイルの変化に対応出来るので、結果飽きの来ない住み継なぐ家になります。

これが三つ目の理由です。

イラスト2 木のハコ

写真は平成8年(25年前)に完成した飯島町Aさんの家と、平成10年に完成した鼎Yさんの家で、同じ様に田の字の構造体を持っています。

両家族共、小さかった子供は巣立ち、現在ご夫婦二人で住んでいます。

この20数年の間に外装の木部は塗り替えましたが内部空間はそのままです。

両方の家に共通なのが全館暖房(太陽熱による床暖房・OMソーラー)である事、その熱を逃がさないための断熱性能と高性能な木製サッシを備えている事です。

この20数年の間に、何度かの大きな震災があり、その度に国の耐震基準が厳しくなりました。

又、世界の気候変動によりCO2の削減が求められ断熱基準も大幅に強化されました。

実は最近20数年前の当社設計物件が現在の耐震、断熱基準に適合するのか検証してみたのですが、十分対応出来ていました。

もちろん実際に住んでいる方からも、冬期間でも相変わらず温かいと評価して頂いています。

基本性能に優れた「田の字」のプランをベースにクライアントに提案してきた事は間違いなかったんだな、と実感しています。

さて今回提案する「木のハコ」は特に今までの家つくりを大幅に変更して新しい物に挑戦しようとしている訳ではありません。

冒頭の設計指針に基づいた全く今までの家づくりと同じです。

「田の字の家」イコール「木のハコ」なのです。

ただ、出来るだけ規格化して建物の金額を明確にし、家を求める方に提案しようと言うのが今回の試みです。

大きな住宅メーカーが新商品の住宅を企画する場合、数年後のモデルチェンジを念頭に、その時々の住まい方の流行や設備を優先させてプランを決定し、構造が決まります。そして大量に同じもの造り利益を出します。

我々は元々流行の商品を大量生産する事を目標にしていないため、より構造的な部分、長寿命の観点からから「木のハコ」を提案します。もちろん規格化する事でコストを下げる事も可能になります。

 

当社も25年の間、何も変更してこなかった訳ではありません。

6年前に2つの仕様変更を行いました。

一つは断熱材です。それまでコストと性能に優れたEPS断熱材を使用していましたが、木繊維の断熱材(ウッドファイバー)に変更しました。

その当時、加熱する気密断熱競争の中でEPSの方が有利な事は解っていましたが、どんどん機械換気に頼らなければならない様な室内環境に対して、大きな疑問を感じていました。(性能は良くても快適で住み心地の良い家と言えるのか?)

そこで吸放湿作用の高いウッドファイバーを断熱材に使用しながら気密性能も確保出来ないかと考え、気密試験や防露計算を行い現在の仕様に至っています。壁には気密シートを使用していませんが、平均隙間相当面積0.7、Ua値0.35を確保しています。

標準仕様は屋根断熱200mmですが、300mmにする事でUa値を0.3以下にする事も可能です。

当社の標準仕様である天井の杉材、左官壁(薩摩中霧島壁)と木繊維の断熱材の相乗効果で機械換気に過度に頼らなくても、冬の乾燥や梅雨の不快感を和らげ快適な住み心地を提供します。

もう一つは外部開口部です。それまで国産サッシの断熱性、結露性能のひどさから、高価な輸入品木製サッシを使用していましたが、6年前国交省が日本のサッシメーカーに改善を求めたため、現在では輸入木製サッシの性能を上回る国産サッシが出て来ました。(もっと早く出してくれと思いましたが)

もちろん希望者には木製サッシを提供できますが、「木のハコ」では性能とデザインが納得できる、リクシルサーモスX(ペア、トリプル選択)を標準装備としています。

(現在の信州ベーシック基本仕様)

この土地に「木のハコ」を建てよう

「木のハコ」を提案するにあたって、当社で推薦する土地に「木のハコ」を建てよう、といった試みをホームページ上で行います。

これは飯田下伊那の不動産情報の中から土地を選定し地主さん、不動産業者さん(宅地建物取引業者)に了解を得て、その土地に「木のハコ」を建てたらこんな提案が出来ます、といった感じにしたいと思います。

建物は本来その土地に大きく影響を受けます。快適な住み心地を実現するには土地の情報を読み取りそれをプランに反映する事が大事です。「木のハコ」は構造プランが決まっていますが、内部空間は自由になるのでその土地に合ったプランを提供する事が容易に出来ます。

同時にその土地に掛かる諸費用を算出し建物とセットで提案したいと思っています。

ぜひ、家づくりの参考にして下さい。

 

長くてとりとめのない文章を最後まで読んで頂き感謝申し上げます。

皆様の願いが届き理想の住まいが実現します様、心から応援いたします。

 

                                         令和2年5月吉日

「木質繊維断熱材で包まれた呼吸する家」